2019(平成31)年3月20日

国民投票運動CMなどの取り扱いに関する考査ガイドラインの公表について

日本民間放送連盟


(放送事業者の責務)
 日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)は、国民投票運動を「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義し、国民一人ひとりが萎縮することなく国民投票運動を行い、自由闊達に意見を闘わせることが必要であるとの考えから、国民投票運動は原則自由とされている。
 ただし、放送においては、▽国民投票に関する放送については、放送法第4条第1項の規定の趣旨に留意するものとする(第104条)、▽何人も、国民投票期日前14日から投票日までの間においては、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができない(第105条)――と規定されている。これは、言論に対しては言論で対処することを前提としつつも、放送メディアの影響力の大きさを踏まえたものと言える。
 憲法改正という国の骨格を定める重要な問題について、報道・広告を含めた放送全ての側面で、正確かつ多角的な情報を積極的に提供することは、放送事業者の当然の責務である。さらに、国民投票運動期間中に取り扱うCMについても、国民投票運動の自由を原則としつつ、放送メディアの影響力を自覚し、視聴者の利益に適うという放送基準の目的を達成するものでなければならないことは言うまでもない。

(ガイドラインの位置付け)
 民放各社で国民投票運動CMを取り扱うにあたっては、他のCMと同様、自社の番組基準(民放連 放送基準)に基づき、適切な考査を行うことは当然であるが、国民投票運動というこれまで経験したことのない事象に取り組むことになる。このため、「憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢」で示された考え方を、民放各社が具体的な考査判断に適用できるよう、特に留意すべき事項を現時点でまとめたものが、このガイドラインである。番組基準(民放連 放送基準)の運用は、民放各社が自主・自律的に運用することとしており、この考査ガイドラインも民放各社が自ら判断するための参考資料と位置付けるものである。なお、本ガイドラインは必要に応じて見直すことがある。

(原則)
 「憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢」は、国民投票運動CMはその内容から、より慎重な対応が求められるものであり、放送基準第89条「広告は、真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない」を前提に、▽広告は、たとえ事実であっても、他をひぼうし、または排斥、中傷してはならない(第101条)、▽番組およびスポットの提供については、公正な自由競争に反する独占的利用を認めない(第97条)――などについて、特に留意することを求めている。
 さらに、投票を直接勧誘しないものの、国民投票運動を惹起させるCMや憲法改正に関する意見を表明するCMなどについても、主権者一人ひとりが冷静な判断を行うための環境整備に配慮することを目的に、国民投票運動CMと同様、投票期日前14日から投票日までの間は取り扱わないことを推奨している。
 この「基本姿勢」を前提としつつ、これまで各社が培ってきた「意見広告」に関する考査上の留意点などを踏まえ、国民投票運動CMなどの考査に当たる必要がある。

(考査ガイドラインの適用範囲)
(1)この考査ガイドラインは、「国民投票運動CM」と「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」に適用する。
(2)「国民投票運動CM」とは、憲法改正案に対し賛成・反対の投票をするよう(または投票しないよう)勧誘する内容のCMを指す。
(3)「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」とは、憲法改正案に対する賛成・反対の意見の表明にとどまり、投票の勧誘を行わない内容のCMや、憲法改正には直接言及しないものの、CM全体からみて憲法改正について意見を表明していると放送事業者が判断するCMを指す。また、意見広告や政党スポットにおいても、CM全体からみて憲法改正について意見を表明していると放送事業者が判断するCMは「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」に含むものとする。
(4)このガイドラインで「CM」と記載している場合、「国民投票運動CM」と「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」を指すものとする。

(広告主)
(5)広告の出稿を受け付ける法人・団体については、これまでの活動実績や放送基準各条などを踏まえ、広告主としての適否を放送事業者が総合的に判断する。
(6)個人が出稿するCMは、個人的売名につながりやすく、また、放送にはなじまないことから取り扱わない。
(7)放送事業者は、広告主の意見・主張の内容やそれぞれの立場などにかかわらず、CM出稿の要望には真摯に応対しなければならない。
(8)放送事業者は、「国民投票運動CM」および「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」を受け付ける用意があることを、CM出稿を希望する広告主に対して明示するよう努める。

(出演者)
(9)政党その他の政治活動を行う団体がCMを出稿する場合、選挙(事前)運動であるとの疑いを排するため、政党スポットと同様、所属議員の出演は原則、党首または団体の代表のみとする。
(10)児童・青少年が出演する場合、その年齢にふさわしくない行動や意見表明を行わせるCMは取り扱わない。

(CM内容)
(11)CM内容は、たとえ事実であっても他をひぼうし、または排斥・中傷するものであってはならない(放送基準第101条)。さらに、他への名誉毀損やプライバシーを侵すものであってはならない。
(12)視聴者の心情に過度に訴えかけることにより、冷静な判断を損なわせたり、事実と異なる印象を与えると放送事業者が判断するCMは取り扱わない。
(13)複数の意見や主張が混在して、視聴者にわかりにくい内容となっているCMは取り扱わない。
(14)企業広告や商品広告に付加して主張・意見を盛り込むCM(「ぶら下がり」など)は取り扱わない。
(15)CMには広告主名と連絡先(CMに対する意見の受け付け窓口)を視聴者が確認できる形で明示したものでなければ、取り扱わない。
(16)「国民投票運動CM」の場合はその旨をCM内に明示したものでなければ、取り扱わない。また、「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」は「意見広告」である旨をCM内に明示したものでなければ、取り扱わない。

(その他)
(17)放送事業者の意見と混同されないようにするため、CMの放送時間帯はニュースの中・直前・直後を避ける。また、特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して放送されることがないよう、特に留意する必要がある。
(18)出版物やイベントの告知であっても、その内容などから国民投票に影響を与えると放送事業者が判断するCMについては、「国民投票運動CM」「憲法改正に関する意見を表明するCMなど」に準じて取り扱う。
(19)上記の留意点を踏まえ適切な対応を行うために、十分な時間を取り、絵コンテ段階から考査を行う。
以 上


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