憲法改正国民投票の執行費用が、一回あたり「850億円」であると、あたかも固定費のように論じられることがありますが、これは明らかな誤りです。

確かに、法案の起草段階で、制度化の準備のために要する費用も含め、一定の見積りの上、執行経費の概算を示したことはありますが(これが850億円という数値です)、これはあくまで立法当時の試算にすぎません。

第一に、「850億円」のうち、すでに執行済みの経費があります。

平成20年度から22年度にかけて、全国の市区町村では、憲法改正国民投票を行う際に必要となる「投票人名簿」を調製するシステムを構築するために、約60億円の予算(国費)が交付金の形で投じられました(投票人名簿システム構築交付金)。この事業は、すでに完了しています。

第二に、憲法改正案の広報に関する費用は、変動費が占める部分が大きいという点です。

国会が憲法改正を発議した日から投票日までの間、国会(国民投票広報協議会)は、憲法改正案に関する広報を、テレビ、ラジオ、新聞といった媒体を使って行うことになっています。

もっとも、これは前記の期間がどれだけの幅になるかによって、当然、広報放送や広報広告の回数も異なってきますし、複数の憲法改正案が発議されると、状況がかなり変わってきます。

国民投票の費用は、その都度、正確に見積もった上で、効果的に執行する必要があるのです。

日本国憲法の改正手続に関する法律(平成19年5月18日法律第51号)
(費用の国庫負担)
第136条 国民投票に関する次に掲げる費用その他の国民投票に関する一切の費用は、国庫の負担とする。
一 投票人名簿及び在外投票人名簿の調製に要する費用(投票人名簿及び在外投票人名簿を調製するために必要な情報システムの構築及び維持管理に要する費用を含む。)
二 投票所及び期日前投票所に要する費用
三 開票所に要する費用
四 国民投票分会及び国民投票会に要する費用
五 投票所等における憲法改正案等の掲示に要する費用
六 憲法改正案の広報に要する費用
七 国民投票公報の印刷及び配布に要する費用
八 国民投票の方法に関する周知に要する費用
九 第106条及び第107条の規定による放送及び新聞広告に要する費用
十 不在者投票に要する費用
十一 在外投票に要する費用

20170120_W530_003
 本書P42~44, 183,184の解説を参照。