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タグ:憲法96条

 イミダスに寄稿しました(11月17日掲載)。

 それでも、改憲論議は進まない ――立ちはだかる5つの問題
 改憲勢力が国会の3分の2? このまま憲法改正国民投票に突き進むのか?

 https://imidas.jp/jijikaitai/c-40-106-17-11-g703 
(マガ9)#120 投票用紙


 国民投票法が制定された2007年前後、いわゆる「最低投票率」を憲法改正の成立要件とすべきか、論争になったことがあります。忘れない程度に、この議論の問題点を指摘しておきます。

 有権者100名の国で、憲法改正国民投票が行われるとします。
 そして、投票総数の過半数の賛成があった場合、憲法改正が成立するものとします。

 国民投票の結果、賛成20票、反対19票、であったとします(以下のケースでも無効投票はないものと想定)。
 投票総数は39票、賛成票が過半数を占めるので(相対得票率51.28...%)、憲法改正が成立します。

 ここで、100名の有権者のうち20名、つまり5分の1しか賛成の投票を行っていない中で、憲法改正が成立するのは不当ではないかとの疑義を挟む余地が生まれます。そこで、最低投票率を40%などと設定し、低い投票率の場合には、憲法改正を不成立とすべきという主張がなされるのです。

 しかし、賛成20票で憲法改正を成立させるべきではないという主張の背景にあるのは、得票率(全有権者数を母数とする絶対得票率)の問題です。

 問題は「得票率の低さ」なのであって、39%という投票率は関係ありません。同じく投票率39%で賛成が過半数を占めるケースとして、「賛成20票、反対19票」から「賛成39票、反対0票」まで、様々考えられます。「賛成39票、反対0票」のケースでは、相対得票率100%、絶対得票率39%となっているわけですから、このとき、憲法改正を不成立にすべきというのは、ハードルを上げ過ぎであると言わざるを得ません。

 また、最低投票率要件を置くと、矛盾が生じます。

 仮に、最低投票率要件を40%とします。投票率がギリギリの39%であって、たとえ賛成の投票が過半数を占めていても、憲法改正が不成立となります。

 この点、投票率が41%の場合(最低投票率をクリアします)、賛成21票、反対20票というケースと、投票率39%(最低投票率をクリアしません)で賛成39票、反対0票というケースを比較してみます。前者における賛成の投票は相対得票率51.2%、絶対得票率21%、後者のそれは相対得票率100%、絶対得票率39%と、後者の方が明らかに優勢であるにもかかわらず、最低投票率を40%と定めるが故、憲法改正を「不成立」としてしまうのです。

 結論を言えば、低「得票率」の問題を、最低「投票率」要件の設定を以て克服することはできない、のです。
 最低投票率要件を設定すると、投票棄権(ボイコット)運動を誘発するという批判は、二の次です。

 あえて低得票率の問題を正面から解決しようとすれば、「過半数」という相対得票率要件しか定めていない憲法第96条第1項を改正し、絶対得票率要件を追加するといった方法が考えられるところです。例えば、「投票総数の過半数(相対得票率)及び有権者総数の百分の四十を超える数(絶対得票率)の賛成を必要とする。」と規定するのです。

 憲法第96条第1項が「相対得票率+絶対得票率」要件になれば、憲法改正の賛成派は、単に過半数を目指すだけでなく、有権者の4割超の投票を得ようとして勧誘運動が盛んになる一方、反対派は否決に追い込むべく、一票でも多く反対の投票を得ようとして勧誘運動が精力的に展開され、総体として投票率が上がるという効果が期待できます。

 もっとも私は、近年、この「最低投票率」の問題を、あまり積極的に話題にしないようにしています。
 社会には、基本的な算数を苦手とする方が少なからずいることも確かで、終始、百分率の話を説く(説き伏せようとする)のは苦痛を与えかねないのです。

 得票率の問題を投票率の問題にすり替えてはいけません。
 単なる用語遣いの問題として、メディアがまず、その社会的理解を促すべく、記事(見出し)に工夫を施すべきと考えます。
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 本書125-127頁を参照。

憲法改正国民投票の執行費用が、一回あたり「850億円」であると、あたかも固定費のように論じられることがありますが、これは明らかな誤りです。

確かに、法案の起草段階で、制度化の準備のために要する費用も含め、一定の見積りの上、執行経費の概算を示したことはありますが(これが850億円という数値です)、これはあくまで立法当時の試算にすぎません。

第一に、「850億円」のうち、すでに執行済みの経費があります。

平成20年度から22年度にかけて、全国の市区町村では、憲法改正国民投票を行う際に必要となる「投票人名簿」を調製するシステムを構築するために、約60億円の予算(国費)が交付金の形で投じられました(投票人名簿システム構築交付金)。この事業は、すでに完了しています。

第二に、憲法改正案の広報に関する費用は、変動費が占める部分が大きいという点です。

国会が憲法改正を発議した日から投票日までの間、国会(国民投票広報協議会)は、憲法改正案に関する広報を、テレビ、ラジオ、新聞といった媒体を使って行うことになっています。

もっとも、これは前記の期間がどれだけの幅になるかによって、当然、広報放送や広報広告の回数も異なってきますし、複数の憲法改正案が発議されると、状況がかなり変わってきます。

国民投票の費用は、その都度、正確に見積もった上で、効果的に執行する必要があるのです。

日本国憲法の改正手続に関する法律(平成19年5月18日法律第51号)
(費用の国庫負担)
第136条 国民投票に関する次に掲げる費用その他の国民投票に関する一切の費用は、国庫の負担とする。
一 投票人名簿及び在外投票人名簿の調製に要する費用(投票人名簿及び在外投票人名簿を調製するために必要な情報システムの構築及び維持管理に要する費用を含む。)
二 投票所及び期日前投票所に要する費用
三 開票所に要する費用
四 国民投票分会及び国民投票会に要する費用
五 投票所等における憲法改正案等の掲示に要する費用
六 憲法改正案の広報に要する費用
七 国民投票公報の印刷及び配布に要する費用
八 国民投票の方法に関する周知に要する費用
九 第106条及び第107条の規定による放送及び新聞広告に要する費用
十 不在者投票に要する費用
十一 在外投票に要する費用

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 本書P42~44, 183,184の解説を参照。

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